形成外科を受診される方へ

形成外科といわれても何をしている科なのかピンとこない方も多いと思います。
分かりやすく説明すると、形成外科とは見た目を扱う外科です。体の表面組織に生じた異常や変形、欠損に対して、いろいろな手法や技術を用い、機能はもとより形態的にもより正常に、より美しく「形成」する外科です。

当院では患者さんお一人お一人の悩みに真摯に向き合い、その方に合ったオーダーメイドの治療を心がけています。

下記によくみる疾患について記載していますが、それ以外でも気にあることがありましたら気軽に受診してください。

主な症状や疾患

皮膚腫瘍

よく見られる疾患で、様々なものがあります。皮膚組織などの一部が病的に変化してしまうと、場合によっては増殖して大きくなり、お肌の見た目を損なったりします。多くの場合が良性腫瘍であり、増殖も緩やかで命にも悪影響を及ぼしません。しかし、一般の方からは同じように見えても、実際には悪性腫瘍のケースもあるので注意が必要です。
悪性が疑わしい場合は切除して病理検査に提出し、良悪の判断をします。

当院では形成外科の技術を用いてできるだけ外見に影響を及ぼさない治療法を提案させていただきます。

皮膚の良性腫瘍の代表疾患

ほくろ

一般的にほくろと呼ばれるものは、正式には色素性母斑とか、母斑細胞母斑と言われるものです。メラニン色素を作成するメラノサイト(細胞)が変化することで発生するとされる良性腫瘍です。良性のほくろでもだんだん大きくなったり、新たに出現することもあります。
なかなか見た目で判断することは難しいですが、左右が非対称、境界が不均等、色が多彩、6㎜を超える大きさ、状態が経時的に変化しているといった特徴がある場合は慎重に良悪を判断する必要があります。
とはいえ、ほとんどの小型あるいは中型のケースで大きく変化がないようなものは、基本は放置でもかまいません。
美容的な観点から除去したいという場合は、取りきるというよりも整容面を優先した、なるべくきれいになるように治療します。その場合は自費治療となります。
なお治療内容については、炭酸ガスレーザーによる除去か、電気メスによる電気分解、外科的切除になります。

いぼ

正式には尋常性疣贅と呼ばれるもので、皮膚の小さな傷口からヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入し、感染することで発症します。あらゆる世代で発症しますが、子どもによくみられます。この場合は、手足のほか、顔や首などで発症することが多いです。

症状については、かゆみや痛みなどはなく、発生してすぐの頃は小さくて平たいのですが、次第に隆起していくほか、表面は角質化し、ザラザラとした感触があります。大きさや数というのは、まちまちですがサイズは数mm~1cm程度のことが多いです。

なお、いぼに関しては何も治療をしなくても重症化することはありませんが、ウイルスが他の部位に侵入して広がったりする恐れもありますので、早めの治療をお勧めします。
いぼは、ウイルスが残っていれば、何度でも再発します。しっかりと完治するまで治療を継続する必要があります。

一番よく行われる治療は、液体窒素によって患部を凍結させ、ウイルスを表皮の細胞ごと破壊していく方法です。1~2週間毎の通院が必要になります。
多くの場合、1回で治すのは難しく、何回か繰り返してやっと治るというのが通常です。根気強く、治療していきます。
また、外科的に除去する方法として、炭酸ガスレーザー治療なども選択肢です。

粉瘤

粉瘤(ふんりゅう)はアテロームとも言い、皮膚の皮が毛穴の奥で袋を作ってしまい、中に老廃物や皮脂が溜まった半球状の良性腫瘍で、中央部には黒点状の開口部があります。強く圧迫すると、開口部から臭くてドロドロした内容物が排泄されるケースがあります。
顔や耳のまわり、耳たぶ、鼠径部(そけいぶ)、背中などによくできますが、全身どこに生じてもおかしくありません。頭のてっぺんから足の裏にも出現することがあります。

また、ある時突然赤くなって腫れや痛みが出て、粉瘤のまわりに急に化膿や炎症を起こすケースもあります。炎症を起こして、はじめて粉瘤に気づいたりもします。
粉瘤が化膿を伴っている場合は、まず化膿の治療を行います。
抗生剤の内服を行い、膿が溜まっている時は、局所麻酔をして切開の上、膿を出します。
内服薬で症状が治まってくれば、そのまま小さくなるまで様子を見ます。
切開排膿後は、中から膿が出なくなるまで、創部の洗浄を続けます。
化膿していない時、または化膿が治まったら、局所麻酔下で粉瘤を袋ごと取り出す手術を行います。
手術後は、翌日に傷の具合を確認し、手術した部位に合わせて1~2週間後に抜糸します。
手術では、粉瘤のヘソと呼ばれる部位を含むように、皮膚の一部と合わせて袋ごとできものを取り出します。

脂漏性角化症

主に表皮(角化細胞)の細胞から増殖するとされる良性腫瘍で、簡単に言うと皮膚が老化することで発生するいぼのことです。その多くは、老人性色素斑(シミ:紫外線曝露や加齢などによる色素沈着)が進行したものです。中年世代から上の方で発生することが大半です。

主な症状ですが、かゆみや痛みなどの自覚症状がみられることはありません。手のひらと足の裏を除いた全ての部位で発生する可能性があるとされていますが、頭部や顔面、首、体幹部でよく見受けられます。色は褐色、茶色、黒など様々で、大きさは直径5mm~数cm程度が多く、形については平べったいこともあれば、隆起しているものもあります。また表面はザラザラしていることが多いです。

見た目だけで言えば、悪性腫瘍(基底細胞がん、日光角化症、ボーエン病 など)にも似ていることから鑑別診断(ダーモスコピー、皮膚生検 など)が必要なこともあります。

基本的には良性腫瘍なので、よほど大きくならない限りは、切除する必要はありません。ただ見た目を大きく損なうことが多いので、気になる場合は治療を行うことも可能です。液体窒素による凍結療法(いぼの切除と同じ)、レーザー治療、外科的切除(手術療法)による治療を行うこともあります。

顔のケガ・きずあと

顔にケガを負うと、傷が治癒する過程において傷を埋める組織が過剰に増殖し、しこりのような傷跡が生じることがあります。ケロイドや肥厚性瘢痕と呼ばれます。
肥厚性瘢痕は、傷があった部分に限定して、皮膚は赤みを帯び、そして隆起するようになります。主な症状として、チクチクしたかゆみや痛みがみられます。また、この場合の瘢痕については、数年が経過することで皮膚にみられていた赤みや肥厚といったものは、軽減していくようになります。

一方のケロイドは、元々の傷の範囲を超えて、周囲の皮膚にも赤みや盛り上がりが増大している状態です。この場合は、強いかゆみや痛みもみられるようになるほか、自然と治るということもありません。
かゆみや疼きなどといった症状は、ステロイドの局所注射、トラニラストの内服薬、ステロイドの外用薬などを使用して治療します。
また瘢痕によって、拘縮が見られる、見た目を大きく損なっているという場合は手術療法が良い適応となることもあります。皮弁法と呼ばれる形成外科独特の手術方法を用いて治療する場合もあるます。また、ケロイドの場合は単純な手術だけでは再発する可能性が高いので、その他の治療と組み合わせて治療を行うこともあります。

やけど

まず、やけどはその深さによってⅠ度からⅢ度に分けられます。
受傷した直後では、やけどの深さを見た目で判断することは難しいです。そのため慎重に経過をフォローします。

初期の対応も大切で、早めに炎症を抑えてあげることで重症度が変わることもあります。
やけどをしたら軽症だと思ってもご自身で判断することなく、患部を冷やしたのちに当院へお越しください。目安は流水で15~30分冷却するのが望ましいです。無理に衣服を脱がず、水道水などの流水を衣服の上から直接かけたのでも大丈夫です。

Ⅰ度であれば、患部のクーリングや軟膏の外用で改善することも多いです、傷あとも残さず治ることがほとんどです。Ⅱ度になると治療に時間がかかり、場合によっては傷痕が残ることもあります。
Ⅲ度になると皮下組織の脂肪組織や筋膜にまで及ぶ深いやけどです。この場合は植皮術を行ったほうが治りも早く見た目や機能がよくなることもあるので慎重に適応を考えます。

皮膚潰瘍

身体表面の皮膚がなくなり皮下組織が露出している状態を皮膚潰瘍と呼びます。
多くの場合、皮膚が損傷を受けた、いわゆる傷ができた場合、ご自身に備わる自然治癒能力が働き傷をふさごうとしますが、何らかの病気に罹っている患者様(糖尿病、閉塞性動脈硬化症、膠原病 等)が、小さな傷を受けてしまうと、なかなか治りにくい状況になってしまうほか、さらに悪化してしまうことがあります。また寝たきりの患者様が寝返りを打てない状態で、同じ部位の皮膚が長い間圧迫され続けるようになると、そこの血流が不足するなどして潰瘍が起きるようになります(床ずれもしくは褥瘡)。

眼瞼下垂

眼瞼下垂とは、目を開ける筋肉(眼瞼挙筋といいます)の機能が弱くなり、目が開けづらくなる状態です。また上まぶたの皮膚のたるみが目の開けづらさの原因となっている場合もあります。
中には生まれつきまぶたを開く力が弱い方がおり、この場合を先天性眼瞼下垂と言います。
生まれた時は正常でも、加齢によるまぶたの皮膚のたるみのほか、様々な原因で眼瞼下垂になることがあり、この場合を後天性(加齢性)眼瞼下垂と言います。
ものが見にくく、まぶたが下がっているために見えにくさや、肩こり、頭痛の症状がある場合では保険を使った手術治療が受けられます(年齢、症状によっては保険診療の適応とならない場合もあります)。
手術では、まぶたを挙上する筋肉を短縮する、または余っている瞼の皮膚を取り除く、あるいはその両方の処置を行います(症状や下垂の程度により手術法は変わってきます)。
眼瞼下垂の手術を受けると目が開きやすくなり、物が見やすくなって、疲れにくくなることも多いです。
眼瞼下垂ですと、まぶたが下がっているため、どうしてもおでこに力を入れ、眉を上げて物を見るようになります。そのため眼瞼下垂がある方は肩こりになりやすいのですが、この手術で肩こりが治る患者さんも一部いらっしゃいます。
また、形成外科では形態にも留意し手術を行っています。